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【2025/9/30】第1シードのアルカラスが、第2シードのフリッツを下して初優勝

[シングルス決勝]
○カルロス・アルカラス(スペイン) 6-4,6-4 ●テーラー・フリッツ(米国)

■木下グループ・ジャパンオープンで、世界ランク・トップ5選手同士の決勝は、4位のアンディ・マリー(英国)が2位のラファエル・ナダル(スペイン)を破った11年以来14年ぶりとなる。ファンの期待の大きさはスタジアムの雰囲気からも感じられた。好ショットには爆発的な歓声が起こるが、サーバーがモーションに入るとスタンドは水を打ったように静まりかえる。ファンが試合に集中し、両者のバトルを楽しんでいるのが分かった。

■試合展開は緊迫した。第1セットはブレークがないまま、終盤まで進む。アルカラスは第5ゲームの0-40など、何度かブレークポイントを逃したが、4-4からのゲームでようやく相手のサーブを破る。バックハンドのダウン・ザ・ラインでブレークポイントを握ると、最後はフリッツのミスを引き出した。

■このゲームが試合の行方を決めた。スコアで劣勢になっただけでなく、フリッツのフィジカルに異変が起きた。「ブレークを許したあと、左太ももに痛みを感じ始め、下半身に力を込めてサーブしたり、ボールに飛び込んだりするのが難しくなった」という。第2セットはアルカラスが序盤から主導権を握り、最後まで流れを手放さなかった。

■「重要な場面で、いいテニスができたことが本当にうれしい」とアルカラスが振り返った。第1セットに何度もチャンスを逃したが、似たような状況だった準決勝と同じように、フラストレーションをうまく押さえ込んだ。我慢のプレーがセット終盤のブレークにつながった。

■フリッツが「最初のセットは本当にハイレベルだったと思う。プレーすること自体を楽しんでいた。ああいう、いいテニスをしていると本当に楽しいんだ」と話したのが印象深い。フリッツにしてみれば、ナンバーワンと演じている互角の戦いに、よほどの手応えがあったに違いない。敗者が、しかも途中で負傷した選手が「楽しかった」という言葉を繰り返すのは、そうあることではない。

■アルカラスは1回戦の序盤で左足首を負傷、コート上での優勝スピーチで、ケアをしてくれた陣営に感謝した。表彰式や記者会見場で見せた笑顔には、負傷を押して厳しい戦いをくぐり抜けた安堵感が見てとれた。過去にラファエル・ナダル(スペイン)らが優勝した大会の優勝者リストに名を連ね、「自分の名前がレジェンドたちに並ぶのは名誉なことであり、エキサイティングだ」と喜んだ。

■準々決勝で「サイドからサイドまで走るのは避けたいから、時にはビッグショットを放つ」と話したように、アルカラスがロングラリーを避ける戦い方を選んだことで、ファンは、その「ビッグショット」や繊細なタッチショットを堪能できたことになる。終わり良ければすべて良し、その言葉通りの大会のフィナーレになった。

(日本テニス協会)

本記事は、日本テニス協会メールマガジン「Tennis Fan」の抜粋です。「Tennis Fan」の購読ご登録はこちらから!
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