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【2023/10/20】車いす・シングルスは、小田凱人が眞田卓を下して初優勝

[車いすテニス・シングルス決勝]
○小田凱人(東海理化) 6-3,6-3 ●眞田卓(TOPPAN)

■昨年の決勝で国枝慎吾に3-6,6-2,6-7と惜敗した小田は、悔し涙をぬぐい、観客の前で「また来年、さらに強くなってこの舞台に戻ってくることを誓いたい」と宣言した。その言葉通り、17歳になった小田は、もっと強くなっていた。6月の全仏で四大大会初優勝を果たし、その後、世界ランキング1位になった。第1シードで臨んだ今大会で優勝すれば、ストーリーが完結する。

■ただ、不安要素があった。9月の全米では1回戦でノーシードのステファン・ウデ(フランス)に完敗。挑戦する立場から受けて立つ側に回ったことで、計り知れない重圧を背負い込んでいた。今大会の準決勝も第1セットは大苦戦、「全米の記憶もよみがえり、嫌な感じで試合が進んでいる」と感じたという。いかに悪い記憶を打ち消すか。小田が自分に言い聞かせたのは「自分のテニスを貫く」ことだった。技術も精神面も今まで通り。「攻めて攻めて攻め切る」。それが今大会に臨む小田の心構えだった。

■第2シード眞田との決勝でも小田は攻め切った。サーブで優位に立ち、コートの中に入って高い打点からウィナーを打ち込んだ。武器の一つである若さの勢いと迫力を前面に出してラリーを支配した。ミスが出ても気持ちがネガティブになることはなかった。マッチポイントでフォアハンドのダウン・ザ・ラインを鮮やかに決めると、力強く拳を突き上げた。

■日本のファンの前で、目指してきた「車いすテニスっぽくない」プレー、つまり、ATPのトップ選手が見せるような、アグレッシブで躍動感のあるテニスを披露した。苦しんできた1位のプレッシャーも、この試合では「自分の力に換えて試合ができた」という。「ランキング80位、90位の頃は、(上位を)食っていくぞっていう感じだった。1位になっても熱いプレーは大事。その『熱』がなくなったら勝てなくなる」と、忘れかけていたものを再確認する大会になった。

■昨年大会で優勝を争った国枝は今回、車いすテニス部門のトーナメントディレクターを務めた。その国枝が目指してきたのが車いすテニスの地位向上だ。小田も思いは同じ。「ここ(ATPツアーと共催のジャパンオープン)に出る意味は他の大会と全然違う。いろんな人に見てもらいたいという思いがすごくある」。決勝の舞台となった木下グループ・アリーナには多くのファンが詰めかけ、競技の面白さと迫力を堪能しただろう。小田をはじめとする車いすの選手たちが今大会で手にした勲章だ。

(日本テニス協会広報部)

本記事は、日本テニス協会メールマガジン「Tennis Fan」の抜粋です。「Tennis Fan」の購読ご登録はこちらから!
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